【夏の北海道】大雪山大縦走(黒岳~旭岳)

渓谷と夏山

8月初旬、ずっと行きたかった北海道「大雪山」縦走ハイクを決行しました。10年ほど前にも計画したのですが、実家の介護問題と仕事にまみれて中止やむなしとなり、それ以来、フライト予約を伴う山行を躊躇していました。が、いよいよ、あれこれ片付いてフリーの身の上となり、ならば、足腰動くうちに行かねば!

北海道の屋根、神々が遊ぶ庭(カムイミンタラ)大雪山。微妙なお天気の中ではありましたが、広大な山並み、壮大なスケール、まさに、早くも天国に来てしまったのではないか!と思うほど、素晴らしい体験をしてきました。

ただ、体力&体調的には限界Maxとなり「10年前だったらよかったのになぁ」と、途中少し心が折れそうになりました💦とはいえ、無事に帰って疲れが癒えると、なんと貴重で尊い体験だったことか、とシミジミ思い出しています。

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縦走データ

アクセス:旭川空港からレンタカーで層雲峡へ。登山口は層雲峡「黒岳ロープウェイ」(層雲峡の宿に前泊)

行程:層雲峡黒岳ロープウェイ・リフトを乗り継ぎ7合目(標高1510)登山口より登山開始~黒岳山頂(標高1984)~黒岳石室避難小屋~お鉢平展望台~中岳分岐~間宮岳分岐~裏旭キャンプ地~旭岳山頂(標高2216)。旭岳下山~旭岳ロープウェイ姿見駅(標高1610)より旭岳山麓へ(旭岳山麓の宿に後泊)

総距離:約12キロ/標準タイム:約8時間/総標高差:登り下り約1,100m

歩いたコースは↓の地図赤線(右上→左下へ)。実は、ヘッポコな私たちは、ランチ休憩45分、その後もちょくちょく休みまくって、最後の旭岳登頂と下山に満身創痍となり猛烈に時間を要する羽目になって、全行程(休憩こみ)で10時間もかかってしまいました。◆黒岳7合目スタート7時過ぎ、旭岳ロープウェイ姿見駅到着は17時過ぎ(ロープウェイ最終一本前)です。それでも、ちゃんと、山の神の思し召しを頂いて、無事に縦走できたことに感謝です!

◆車の移動:北海道の足は車が必需。なので空港でレンタカーを借りて、黒岳登山口層雲峡の宿へ。しかし私たちの体は山から山へと移動してしまいます。そのため、登山中に後泊する旭岳麓の宿へ車を回送してくれる山岳スキップサービスを利用しました。山中を彷徨う間に、車はサクッと次のホテル駐車場に来ていました!ヘロヘロで下山して姿を見つけた時、ちょっぴり嬉しくなりました🚗。。 

※行程は逆(左下の旭岳→右上の黒岳)に歩いても距離・時間・標高差ともにほぼ同じ。私たちは下山後には、美瑛や富良野を観光したくて、初日に層雲峡に泊まりました。でも思い返すと、ザレ場に苦労する旭岳下山よりも黒岳下山の方が歩きやすいのかもしれません。

縦走スタートは黒岳登頂から

さて、いよいよ大縦走チャレンジ開始💗

午前6時に宿を出発。とことこ歩いて黒岳ロープウェイへ。すでに列ができていました。大雪山系は広大な国立公園ですから、皆さま思い思いに歩かれるのかな。

黒岳は、ロープウェイで5合目まで、その後リフトで七合目までラクチンに上がれます。

前夜は雨で、なんだか空が白いのですが、きっと晴れてくる。二人乗りの長いリフトで上がります。前の山ガールさんお二人と一緒に黒岳山頂まで登りました。

午前7時過ぎ七合目登山口出発。今回もはりきってLet’s Go❣

登山開始地点は標高1500mを超えていて、北海道の山ではすでに森林限界。ところどころ眺望がパァ~ッと開けます。晴れてきた。うふっ。

なんだか、このところの暑さによる運動不足と(実は前夜に発熱してしまい、早朝には薬が効いて解熱できたのでありますが)体調いまいち💦ものの2-30分登っただけなのに、すでにヘタレ気味。

でもでも、黒岳は登山道が整備されていて、とても登りやすい山でした。登頂までの標準タイムは1時間10分。

登山道の両側には、高山植物たちが気持ち良さそうに風に吹かれていました。

たぶん気温は20度あるかないか、ぐらいかな?と思いますが、すでに汗だくです。不思議な巨岩は風雪に耐えた山肌ならではですね。

標準タイムを20分ほどオーバーして午前8時半頃、山頂着!晴れてます🌞熱もなし!

楽しくおしゃべりしながら登った山ガールさんお二人は、ここからピストンで下山されるそうで、縦走する私たちとはお別れですが、しばし、この絶景をみんなで堪能しました。

黒岳山頂からの絶景

もう、スゴイ!なんという広々とした山域なのでしょう。海外の山(まだ行ったことありませんが)みたいです。あの道をずっとずっとずーーと歩けるのだなって思うと、ワクワク・どきどき。しかも、空は青い。

ここからは、目指す旭岳の姿はまだ見えません。ずっと遠いのです。でも、みんなも歩いた8時間。きっと行ける。

まずは、朝昼兼用の腹ごしらえをするために、黒岳石室の避難小屋へ向かいます。あっち。

まだ縦走は始まっていないけれど、すでにこの場所にいるだけで大満足に浸れます。もう本当に素敵な空中散歩でありました。

相棒ヘッポコが舞い上がるのではないかと思ってしまいました。そんな錯覚👀も、ありです。

大雪山は高山植物チングルマの花畑。7月には白い可憐な花が咲き乱れるのであります。ただ、7月に高山に行けたことがなく、今回もやっぱり、綿毛の季節になっていました。

中に一つ二つ白い花が咲き残ってくれていました。ありがとう。

ほどなく黒岳石室避難小屋到着。ここは宿泊も可能です。私たちは、外のテーブルベンチに腰を下ろして、宿で作ってもらったお弁当を食べさせていただき、バイオトイレをお借りして、長い休憩を取らせていただきました。

午前9時40分、石室出発。これから長い縦走路を歩きます。(本当は9時発の計画だったのに、すでにここで40分も遅れている…のですが、まあ最悪でも旭岳ロープウェイ最終17時半までには、まだまだ余裕、たっぷり時間があると、この時は思っていました)

大縦走スタート~お鉢平展望台へ

どこまでも広い広い草原と山々。ここには氷河期の生き残りであるナキウサギや、ヒグマたちも生息しているそうです。ナキウサギに会いたかったのですが、残念ながら会えませんでした。おかげか?ヒグマにも出会うことなくホッとしました。でもきっと、この広大な山域のどこかで、それぞれの暮らしを営んでいるのかな、と想像しつつ。。。チングルマの綿毛はとても美しい。

雲上の尾瀬のような場所と聞いていました。確かに、そうだ。

でも少し歩くと、雪渓を宿した荒涼とした山肌があらわれます。

大雪山系は火山群であるのだと思い知らされます。これまた、はてしなく大きくて広い、まるでちがう惑星に降り立ったかのような景色でした。

えっ、まさか登る?これが誤算でした。実は縦走路の各所で結構なアップダウンがあります。わりと一所懸命登ったりしなくてはなりません。あらかじめYouTubeでよその人の動画を見たりしていたのですが、アップダウンがキツイなんて誰も言ってなかったのに、、私たちはヘッポコすぎて💦💦

この岩場を登りきると、どこ?

お鉢平展望台です。午前11時頃着

ここは約3万年前の噴火によってできた直径約2kmのすり鉢状のカルデラです。現在でも有毒ガスが噴出しているので近寄ってはなりませんが、緑のハイマツに黒い生き物が動いていたような。もしやクマさんだったりするのかも、と思いつつも、どっしり腰を下ろして休憩しました!

歩いて歩いて分岐を超えて~間宮岳分岐へ

ここからしばらくお鉢平をぐるりと回り込む天空散歩がはじまります。がしかし、ガスが上がって来て、まるでミストの中を歩いているようになりました。昨夜の雨が太陽に温められて細かい水蒸気になったのかもしれません。それにしても、広大だ!

全身がしっとりと潤います。

少し離れると、姿を見失うほどなので、滑落注意!ゆっくり行こう。

足元に、コマクサ発見!高山の険しい岩場に咲く気高い花コマクサは、大好きな花であります。この花に会えると胸キュンとします。今年もお会いできて嬉しい💓

やっと、中岳分岐到着(午後12時頃)。ほとんど人を見かけないのですが、この分岐で旭岳から下りて来られた方とすれ違いました。縦走ではなく旭岳を回り込んで姿見に戻るコースを歩かれるそうです。だから分岐。そこで、お尋ねすることにしました。「ここから旭岳山頂までの道のり、アップダウンはどうなっていますか?」

まずは「黒岳から縦走して来られたんですか!すごいすごい」と褒めて頂いたのですが、それからショックな現実を知らされることになり…「ここをゆるやかに登りきると平坦な道になりますよ。でも最後の旭岳の登りはかなりキツイと思います。ぜひ頑張ってください」とな。むむむっ💦

ガスが晴れると、神秘的なカルデラが姿を現します。

なんだか、恐竜とか、住んでるのではないかって、頭の中を妄想がかけめぐります。

間宮岳~間宮岳分岐到着(午後1時頃)。ただただ広い広い荒涼とした溶岩草原が広がっています。

あまりに山が広くて大きくて、本当に、他の登山者さんたちに出会うことはとても少なくて、ほとんど貸し切り状態。二人でひたすら歩き続けました。

間宮岳分岐からは、旭岳山頂へ向かって、進みます。この頃になると、旭岳山頂登頂15時、ロープウェイ駅17時着を、絶対やり遂げねばならぬ最終目標にすえて腹をくくりました。(本当はもっと余裕があったハズなんですが)。でも、まだ大丈夫。

それにしても、思えば遠くに来たものです!ガスが早いスピードで流れて行きます。

もし、夜になったなら、満点の星に包まれて、宇宙の中を漂っているみたいな気分になるに違いないよね。想像してみました。

荒々しい山肌は、古の噴火爆発がいかほどだったのかと、この地球の、想像を超えた歴史の驚異におののいてしまいます。

旭岳登頂~大雪山系最高峰へタッチ

あっ、旭岳が姿を現しました。そして、ようやく緑の草原が出現。緑はこんなにも心を慰めてくれるのだと、しみじみと胸にしみる。

裏旭キャンプ地付近(午後2時頃)。ここから先は、「心がポキポキ折れるキツイ登頂」が待っています。キャンプ地には携帯トイレ用ブースがあります。小屋もなくトイレもない長丁場には、携帯トイレ持参が必需。ほっと一息ついて、たっぷりと休憩します。とにかく、目の前に立ちはだかるあの頂を超えなければなりませんから。(画像左の稜線から雲に覆われた山頂を目指します

この最後のザレ場の登りが本当にきつかった。例年なら雪渓を登ることになるのですが、今年に限っては雪が解けてしまっていて、ザラザラのザレ場です。少し足を置き間違えると、たぶんザァーと滑り落ちてしまいそう。

でも、行かねば。画像で見るとなだらかに見えるかもしれませんが、かなりの急こう配です。この後、ヘッポコもカメラ触れず、自分の身は自分で守ってね!とな。

もうすぐ頂上へ。少し気持ちがほっとして振り返ると、歩いてきた道が見える。

大雪山は現在も活火山に指定されています。旭岳は、より一層火山であることを感じる山でした。荒涼としたザレ場が少しずつ山の形を変えているみたいで…。いつの日か、頂上に突きさしてある立て札が、砂場の山くずし遊びみたいに倒れてしまうのかもしれない、なんて想像したりして。

そしてやっと、旭岳登頂(午後3時頃)、やりました!旭岳2291m。大雪山系最高峰です。

山頂は残念ながら、真っ白なガスに覆われてしまっていましたが、本当によく頑張りました。ヘッポコそろって、おめでとう❣

本当はこの時間には姿見池周辺に下山しているつもりでした。2時間オーバーです。でもこの後は標準タイムで下山をするつもり。何しろ当日の山天気ではこれから雨予報。それに何よりも、ロープウェイ最終時刻に絶対に乗り損なわぬように、レッツゴー!

大縦走の締めくくり、旭岳下山

なのですが、ゲッ、ゲゲゲ!めちゃくちゃ厳しいザレ場の急こう配を下山することに。怖い!もう、またしても心が折れる。

だけど少し頑張ると、名物「金庫岩」出現。あれ?ニセ金庫岩というのもあるそうで、これはどっちなんだろう。

たぶん、金庫岩。金庫みたいだから?ふむふむ。

そんなこと言ってると、ヘッポコがザザザ~と滑り落ちていきそうになり、そういえばヘッポコ相棒は、以前にある山で滑落しそうになって肋骨骨折をしたことがあったのでした。急ぎ過ぎないで!ゆっくり行けば絶対間に合うから!と、声を掛け合って慎重に。

ただ、だれもいないことが不安で仕方ありませんでしたが、雨予報の空に青空戻る。

小一時間下りてくると、噴煙が立ち上っていました。ここは旭岳の麓にある火口で「地獄谷」と呼ばれています。活発な噴気孔が多数あって、高温の水蒸気と硫黄ガスを噴出しています。こんなの見るの初めて!

午後4時を軽く過ぎてしまい、いよいよタイムリミットが迫ってきたところで、旭岳石室避難小屋の建物を発見。

姿見周辺は真っ白なガスに包まれて、かろうじて姿見ノ池が見えました。まもなく午後5時。本当は姿見周辺を散歩したかったのですが、とにかく今日は下山セネバ。そして、午後5時15分(最終1本前)のロープウェイに滑り込みました。

そうして、ヘッポココンビの長~い一日が終わったのでした。

よれよれになりながら、山麓駅から最も近いホテルへチェックイン!レンタカーは層雲峡黒岳登山口からちゃんと走って来ていて、ホテルの駐車場でニッコリ笑ってくれていました。

そして翌朝、気を取り直して姿見界隈お散歩リベンジへと向かったのです。

姿見ノ池散策(翌日)

朝起きると、体じゅうが痛い。どんなに温泉に浸かっても癒えることのない痛みで起床。それは全身筋肉痛というヤツです💦

この日もお天気は怪しかったのですが、どうしても(大縦走を完結させるためには)姿見界隈を散策しておきたくて、もう一度ロープウェイに乗りました。

今日は傾斜もゆるやかな散策コース。リュックもないし、気楽に行けそう。ガスが晴れることを祈りつつ、ぶらぶらお散歩開始だぞ♪

姿見界隈ぐるりと一周は約1時間。楽しい散策路が整備されています。

おっ、夫婦池(鏡池・すり鉢池)。かわいい💗💗です。

標高1600mの天空の散歩道には涼しい夏風がふいていました。

姿見ノ池です。

地獄谷。今日も元気に噴気孔から水蒸気が立ち上っていました。山が生きているのだって教えてくれているようです。

姿見ノ池からたちのぼる霧。不思議に幻想的でした。ここからは昨日下りて来た旭岳が見えるはずだったのですが、ガスの中。でも、そこに山がそびえていることを、私たちはしっかり心に刻んでおります。

というわけで、長年積み残してきた目標「大雪山大縦走」を見事に実現することができました。

あれから何日も過ぎますが、本当にキツかった。でも猛烈に充実した一日でもありました。

これまで色んな山を歩いてきましたが、これほど宇宙に近づいたって実感した山歩きはありません。もう少し手を伸ばせば、この星から飛び出してしまうのではないか、いやもしかして、ここはすでにちがう星、または異次元の世界で、私たちはどっかで道を間違って迷い込んでしまったのではないか。なんて。

色んな妄想が頭の中を駆け巡り、ことあるごとに、この長い長い一日を回想しています。

都会の猛暑に埋もれていると忘れてしまいそうになりますが、私たちは宇宙の子。

そんなワクワクする素敵なことに気づかせてくれた「大雪山大縦走の思い出」は、わが家の忘れられない宝物になりました。