南アルプス仙丈ケ岳②~氷河期からの贈り物

あの頂きへ
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9月17日、南アルプス「仙丈ケ岳」、2日目の朝を迎えました。

※初日の登頂&稜線歩き、そして素晴らしい落日のショータイムは⇒こちらにて(南アルプス仙丈ケ岳①~3000mの稜線から落日の夕陽へ)

さて、2日目、朝5時!日の出の時間を見計らい、東側の稜線へとカールを登り、新しい朝日を迎えにまいりました。

群青色のヒンヤリと冷えた闇の中をヘッドライトを装着して、テクテク。

あっ、頂上が見えます。そして、夜遅くに昇った「立待月」。そっか、そんなところに居たのですね。昨夜は星空を隠さぬように山肌に隠れていてくれました。

空が明るくなってきました。でもガスが、お日様はきっとあそこだよね!このガスが降りてくれれば・・・

しかし残念ながら、昨夜沈んだ太陽は、もしかして南アルプスの女王「仙丈ケ岳」、女王様への拝謁が恥ずかしいのでしょうか(-_-;)

とりあえず小屋に戻って待機。朝5時半朝ごはんです。すると、晴れてきましたよ~☀小屋のスタッフさんの笑顔にウキウキして外に出ると、さっきまでのガスが晴れてお日様が顔を出し、早朝の空が水色に染まり始めていました。

刻一刻と水色は青みを増して、氷河が山肌をこそげ落としたお椀のようなカールに元気な朝日が差し込みます。

やったー💓

振り返ると雲上テラスは、ガスを散らして雲がしぶきをあげています。

行かなくちゃ❣今こそ登頂、再チャレンジです。急いで小屋の皆さまにご挨拶をして身支度を整えて、イザ出陣!

ヨイショ、ヨイショ。日差しが当たると暖かくて、まだ秋は始まったばかりなんだなと実感します。

着いた~(#^.^#)

仙丈ケ岳3,033m再登頂です。

おっお~あれに見えるは、2番目に高い山「北岳」3193m、お隣に続くのは4番目に高い山「間ノ岳」3189m。そして北岳の背後には日本一の「富士山」。

「北岳」といえば、3年前登ったよね‼「おーい、元気ですかぁ~」3年前の私に呼びかけてみる(*^^*)

そして、昨日には真っ白の中で記念撮影をした頂上看板で、仕切り直し。ここが3,033mの頂上なんだって、雲海に浮かぶ山頂に立ってるんだって、ビュービューと音を立てる風に吹かれて、初めて実感できました。

青い青い空に白い雲海。浮かび上がる富士の山に、北岳・間ノ岳の素敵な雲上ランデブーです。

仙丈ケ岳頂上はぐるりと360度ビューです。あっちは中央アルプスの山並み。

こっちは、八ヶ岳と甲斐駒ヶ岳。勇壮な甲斐駒はザブンと大きな波しぶきをあげています。

もう一度、なんたって富士山。富士山という山は、どうしてこんなに幻想的なのでしょう。富士山ならではの美しい頂のシルエット。

そしてゴツゴツとした恐竜さんが寝転んでいるみたいな北岳。3年前にはあの頂上から富士山を拝んだのでした。(※ご興味ありましたら「北岳登山日記」⇒こちら

いやはや、こうでなくちゃ(*^-^*) 朝7時前の早朝登頂のため、頂上はヘッポコと二人占めです。頂上小屋泊ならではの醍醐味。この景色、独占中!うふふっ。

とはいえ、登ったら降りなくては。

コースは森の中を下山するルートもあるのですが、私たちヘッポコには、今回の重要命題「雷鳥に会う」が未だ達せられておりませんので、何しろ雷鳥は標高の高い岩場のハイマツの林に居るハズ!

頂上絶景も誠に名残惜しいのですが、せっかく青空を頂戴したので、雷鳥を求めて、のんびりな稜線コースを歩くことにします。

さすが3,000m超、なだらかでも逞しい山の趣には別世界の威厳さを感じます。

振り返ると、山頂とカール、そして素晴らしい青空。日焼け必須(^^;)

氷河が解けてこそげ落としたのだというカール。氷河時代っていつのことだったのか、何百万年前?そんな頃からこの雄大な世界を作っていたのだと思うと・・・私たちがちっぽけ過ぎて、言葉もなくします。

さて、本日最大の課題!雷鳥を探せ‼

すると程なくして、軽快に前を歩くヘッポコ相棒が、慌てふためいて戻って来ました。そして、声を潜めて言うのです。

「いた!いたいた、マジいたって」「またぁ~ホシカラスじゃないの?」「ちがう、本物だよ、いたって!静かに、そぉ~と歩いて」

すると。。。

まるまると太ってトコトコ歩いてる。しかも、めちゃくちゃ可愛いじゃないか!

目が赤い子は雄なんだって聞いていました。岩の色と一緒。まさかの雷鳥ランデブー♪夫婦?親子?見ると何羽もの雷鳥が・・・たぶんきっと家族ですね。

雷鳥は、氷河期に取り残された生きた化石、日本においては、2万年の奇跡を生きた鳥、といわれ特別天然記念物に指定されています。

雷鳥は危険なことでもない限り、めったに羽根を広げて飛ぶことはありません。なのでトコトコ、移動は徒歩。夏場は岩と保護色で、冬には羽根を真っ白に換えて、雪と保護色になります。

お食事中?お腹の羽根が白くなり始めています。冬支度が始まっているんですね。

雷鳥は夫婦とっても仲良しで、どちらかが死ぬまで添い遂げて、いつも一緒に行動するのだそう。ハイマツの下に落葉を敷き詰めたお家をつくり、晴れた日は食料を求めてお出かけ、雨の日はお家でまったり、家族仲良く暮らします。晴耕雨読?幸せそうです。

雷鳥との出会いに興奮して長居をしてしまいました。そぉっと声を立てず音を立てず!の言いつけ通り、静かに見守り続けたおかげか、私たちには気づくこともなく、雷鳥たちの平和な日常を観察できました。

「雷鳥」の名前の由来は、雷が鳴りそうな雲行きになると現れることが多いのだそうで、えっ?まさか、そしたら早く下山せねバ(^^;)

雷鳥家族に別れを告げて、気持ちの良い稜線を、私たちもトコトコと歩きます。

あ~もうこんなに、降りてきてしまったのですね。女王様~(^^)/

ハイマツと青空!いつのまにか、雲の下へと潜り込みました。

あっ!そうでした。たぶん私だけのプチ難所「⇔岩」。今日もある(>_<)

昨日の学習を踏まえて、座り込んじゃダメ!二本足で歩くのだ。おっ、意外と大丈夫(*^^)v

カールから下界の温まった空気がガスになって盛り上がってきていますが、朝の稜線は美しいです。

南アルプス「仙丈ケ岳」。穏やかな山容に美しいカールの稜線は、心に残る清々しい景色です。

仙丈ケ岳は、稜線を行く「尾根ルート」の他に、高山植物が豊富な「藪沢ルート」という森を進むルートがあります。今回は雷鳥さんのことやお天気のことで、尾根ルートをピストンいたしましたが、きっと女王様の咲かせるお花たちもどんなに美しいかと思いを馳せて・・・

ただ、この青空はヘッポコにも心にしみたようで、素敵な山旅の最後の稜線を、心行くまで覆いつくしてくれました。

稜線を抜けて、一路下山。森の下山道は霧の中へと突入。上はあんなに晴れていましたが、なるほど仙丈ケ岳、お昼間の森は幻想的な霧に包まれました。

雷鳥の合図?の雷が鳴りはしないかとドキドキしましたが、おとぎの世界のような懐深い南アルプスの森を歩き、のんびりと楽しく下山してまいりました。

ということで、今回は、落日の夕陽ショーと満点の星空を旅して、そして「氷河期」の残してくれた大事な遺産絶景カールと雷鳥と、とてつもなく長く生き続けているこの星の、素晴らしい息遣いを感じる山旅になりました。

忙しい日々の隙間に、こうして夫婦で山登りをしています。

50代の私たちには多くは望めませんが、それでも、ただ歩く、そんな思い出づくりがちょうど良いようで、この地球の長い歴史の中、ほんのわずかな時間、共に生かされていることに感謝して、またのんびりとお互いに手足携え、歩いてまいりたいと思います。