引き続きヘナチョコ山レポ、続きです。
※ここまでの道のりは、北アルプス「奥穂高岳」①~憧れのあの山へ⇒こちら
そして、新しい朝が開けました!
雲海から昇る朝日を見つめるのはもう何回目だろう。でも、絶対に飽きることはないのです。だっていつだって、朝日が連れてくるのは経験したことのない真新しい朝なのですから。
おはよう。
太陽が昇るチリチリとした音が聞こえてきそうです。
標高3000mの朝は寒い。空気がキーンと冷えて雲一つありません。
今日はどんな一日になるのでしょう。どんなことがあってもお日様が照らしてくれる限り大丈夫!必ずそう思える、朝日って凄い。
奥穂高岳山荘は奥穂高岳3190mと涸沢岳3110mの間に建つ小屋で、朝日に向かい左手は涸沢岳。
朝日が涸沢岳を赤く染めました。朝焼けのことを「モルゲンロート(Morgenrot)」と言います。山だって、夜の間に冷えた体を温めてくれる朝日がどんなにか嬉しいでしょう。と思うと嬉しくなります。
恐る恐る右手を見ると、やっぱり居る。これから登る奥穂高岳。
しばしは朝日に手をあわせ、今日一日の無事を祈ります(^^;
これは・・崖だよね!?昨夜から引き続き相変わらず不安でいっぱいですが、見ると人が登り始めていて、梯子や鎖も見えます。でも、やっぱり垂直の崖だ(>_<)
そして、イザ!決行!!
少し前にここで梯子を登っていた人が足を踏み外し下から登って来た人に接触して二人とも滑落してしまったという事故があったそうです。梯子に限らず何しろ滑落事故の多い穂高ですから手足も気持ちも引き締めてレッツゴー!
三点確保を忘れずに。梯子は一人ずつ。
※三点確保とは、全身を使う岩場歩きには両足両手の4点のうち動かすのは1点だけだゾという登山用語です(^^;
よじ登れ~!下は見ないことにしよっ(-_-;) 見ない見ない(>_<)
垂直の崖の上は少しなだらかな岩場になりました。普通に怖い岩場なのに強烈な経験の後はなんだかホッとしたりします。
わぉっ!太陽がキラキラ照らして雲海の波は穏やか。ウヒッ♪ウヒョッ♪♪ちょっと楽しい~!(^^)!
前を行く登山ガイドさんとツアーの皆さん。穂高ではそんなベテランガイドさんと一緒のツアー登山者さんもいっぱいでした。うちのヘッポコガイドは自分のことでいっぱいいっぱいのご様子ゆえ、この際本物のガイドさん付きご一行の後を追う(^^;
すでにもう一部の岩には霜が降りて思わず滑りそうになりました。滑る?滑落?ダメダメ!ということは、10月になると山頂は雪とか霜とか凍結でツルツルしてしまうかもしれません。そう思うとヘナチョコな私たちにはこの時期が限界だったかもです。
そして、ブルブルしながら1時間弱がんばって、やっと登頂成功です(*^^*)
狭い山頂は大賑わいでした。
奥穂高岳3190m。
山頂からは360度ぐるりと大展望。
ホッホッホの「槍ヶ岳」。
ここから北穂高岳、槍ヶ岳方面へはV字の岩稜帯があって「大キレット」と呼ばれており、国内最高難易度のルートです。そこを歩くことは私のこの人生では絶対にありえませんが・・・((+_+))
前穂高方面へ。
ここもまた「吊り尾根」という美しくも険しい難所があり、やはり私が行けることはないと思いますが、向かう人あり!
ジャンダルム。
奥穂高といえばこのドーム状の切り立った岩峰「ジャンダルム」がとても有名で、何人もの人が山頂から続く稜線をジャンダルムに向って進んでいかれました。
でもやっぱり危険なんです。だってこの絶壁を見て。足場もとても狭くてゴツゴツでデコボコでアップダウンもすごい。ここではつい先日も2名の方が滑落死されていて、私には無理です。
ヘッポコが恨めしそうに、先端に立つ人がこんなにいるんだ!と教えてくれますが、ホント無理ですってバ!それは120%じゃなくて200%超えだから(+o+)
とても自分では行ける道ではありませんが、山頂から四方八方に続く岩の稜線はどれもとても美しく、ゆえに登山家たちの心を揺さぶり、行かずにはいられない!のだろうと痛感しました。(いえ私はたぶん絶対行きませんが)その気持ちはとても良く、ホントに良くわかりました。
山頂で北アルプスの見本市のような景色を堪能し、下山開始。
こんなところを登ってきたのですね、改めて、良く頑張りました(^^;
昨日はガスの中をさまよったザイテングラード(岩尾根)も意外にも難なく下りて見上げる空は秋晴れ!しかも晴天!
なんだかいつの間にか「高所恐怖症」が克服できてしまったような気がします。すごい(#^.^#)
「穂高ぁ~またなぁ~!」byヘッポコ
また?マジ?私はもう次はここ「涸沢(からさわ)」止まりで十分だけど。。。(要相談!)
そして涸沢(からさわ)カール到着。涸沢ヒュッテでのんびりお昼ご飯にいたしました。
※涸沢カールとは、穂高連峰の奥穂高岳・北穂高岳・前穂高岳に抱かれたカールで氷河期に氷河が山肌を削ってできた広いお椀状の谷のような地形の場所です。穂高登山の中継点として、また紅葉シーズンは絶景の名所となり一大テント場でもあります。
涸沢(からさわ)カールです。
絶景の紅葉にはひと足早く、例年のベストシーズンは9月末~10月初。でもこの景色は体験したことのないような美しさと3000m級の山々に囲まれた何とも言えぬ偉大な包容力にほっこりといたします。
昨夜泊まった穂高岳山荘はあのくぼみのところだね。なんて話ながら、のんびり。
今度はここ涸沢にテントを張って日がな一日ぼんやりと寝そべって過ごしたいです。できれば来週でも戻って来たいぐらい。だってここでそんなことすると、もしかすると何だか想像もしていなかったような楽しいことが閃くのではないかとちょっとウキウキしました。
険しい山に登らなくても、ここまでだってうんと楽しい山歩きになりそう。本当にきっといつか必ず戻ってきます(^_-)-☆
実はここまで下りて問題発生!半月板を摘出した右膝が猛烈に痛み始めてしまいました(´;ω;`)どおしよぉ・・・。まだこれから上高地までは4-5時間の道のりというのに。サポーターをギュギュッと巻いて、そろりそろりの下山開始。明日は仕事だ!何としても帰るのだー!
ありがとう穂高!赤いナナカマドの実が風に揺れて手を振ってくれました。
屏風岩まで下りてきました。
あっ、やっぱこれは壁だ!でも壁だって周り込むと登れるんだよ!涸沢から屏風の頭に登る道があるんだ。壁は越えるよりも回り道!byヘッポコ。
膝がどんどんわがままになって言うことを聞いてくれず、歯を食いしばらねバ💦するとここで頼もしい道連れさんに出会いました。奥穂高岳から下山してこられたソロ登山の山男さん。日が傾き始め一緒に上高地までダッシュすることに。おしゃべりしていると気がまぎれます。しかしその山男さんがとんでもない余計なことを…「奥穂高はキツかったね~奥さん足ダイジョブかな~ぼく以前槍ヶ岳に行ったけど、あそこは奥穂高岳より楽ですよ!」そして、ほくそ笑むヘッポコ(-_-;)
まぁまぁ、まずはとりあえず上高地へ!秋の夕日が木々を透かして、それはそれは美しい景色になりました。
こうして、私にとっては強行軍だった2泊3日の奥穂高岳登山は無事にケガなく終了しました。
それにしても、少し前までは「奥穂高岳」なんてそんな立派な山の山頂に立つことができるなんて、とても想像もしていませんでした。でも体験して思うことは、これはやっぱり「行かなければ知ることのできない世界がそこにある」まさにその一言につきるものでありました。
目に見える景色のみならず、山の草木や空気の匂い、風や木々や鳥たちの声、水や草木や岩肌の触感、山頂で思いっきり深呼吸した時の空の味、全てが私を包み込み、それはそれは体験したことのないような別世界へと連れて行ってくれるのです。北アルプスの懐の深さに大いに感激した素敵な旅でございました。
そして旅の最後には、そんな世界の中へとヘッポコと二人で歩く道が、これからもずっと、できるだけ長く続いてくれることを、しみじみ願うのでございます。