関東一遅い紅葉名所「梅ヶ瀬渓谷」(千葉県“養老渓谷”)

紅葉の山

今年は、秋が一気に深まり瞬く間に冬の寒さがやってきてしまいました。

関東一遅い紅葉が楽しめると聞いて、本当は12月初旬に訪ねようかと思っていたのですが、どうやら一週間ぐらい早まっているようだ!そこは、千葉県市原市にある養老渓谷のさらに山奥の渓谷「梅ヶ瀬渓谷」

ならば急がなくっちゃ、というわけで、11月30日(日)、大慌てで出かけてまいりました。

梅ヶ瀬渓谷ハイライト動画

行ってみると、とにかくもう、めちゃくちゃ感動してしまいました。なので長々レポする前に、のっけからハイライト動画をアップしちゃおう!

何たって渓谷内は、両側に高さ30~50mの浸食壁のあるダイナミックな景観がずーと続く。言葉では言い尽くせぬほど素晴らしく、紅葉絶好期の静かな渓谷は、まるで不思議の森、まさに『神秘の森』でありました。

往復ゆっくり歩いて、まったり過ごして渓谷内に約3時間、ずっとこの景色の中。(動画↓↓↓)

養老渓谷について

養老渓谷とは、房総半島のほぼ中央、千葉県夷隅郡大多喜町粟又から市原市朝生原を流れる養老川によって形成された渓谷です。そして、梅ヶ瀬渓谷とは、養老渓谷に隣接する渓谷で、その養老川の支流である梅ヶ瀬川の侵食によって形成された渓谷です。

養老渓谷といえば、栗又の滝(養老の滝)の景色を愛でる滝巡りがお勧めされているのですが、我が家はヘッポコではありますが山ノボラーを自負しており、しかも人が多い観光地は苦手💦しかし私の膝腰不調もあり、う~んと検討した結果、ここ「梅ヶ瀬渓谷」で沢歩きをしよう、ということになりました。結果大正解💚だけれども、栗又の滝にもそそられる、それは次回の宿題に。

ところで、大事なことなのですが、千葉県には熊さんがいない!房総半島は平野や海に囲まれており、他の山地からクマが移動してくるのが難しいとかなんとかで、とにかく熊さんがいない!なので、めちゃくちゃ安心!熊鈴もスプレーもいらないのだ。

◆アクセス(電車&小湊鉄道)

紅葉ピークの休日、東京湾アクアラインの渋滞と現地駐車場が心配で電車で向かいました。

都内自宅→新宿駅→(JR特急)約1時間→五井駅→(小湊鉄道)約1時間→養老渓谷駅(ここから歩きます)

小湊鉄道に乗りました

養老渓谷駅へは風情たっぷりのローカル鉄道「小湊鉄道」で向かいます。新宿からはJR特急で約一時間「五井」という駅で乗り換えます。五井駅始発ホーム、おっとりとした車両が快く迎えてくれました。

小湊鉄道は大正14(1925)年に開通した非電化・単線の路線なのだそう。作動するのだろうか?と心配になるようなエアコンと扇風機、対面式の座席がずらりと並んだ重厚な雰囲気の車両でした。午前9時台、この日は五井駅から空席なしで出発。

ハイキングコース

ハイキング出発点は養老渓谷駅。梅ヶ瀬渓谷のコースは二つあります。大福山を回る「尾根ルート」と、川沿いを歩く「沢ルート」。今回は「沢ルート」を歩きました。

駅からしばらくは里山歩きが続き、トンネルをくぐりぬけ、尾根ルートとの分岐から渓谷入口へと進み、沢歩きを楽しみながら、最深部の日高邸跡地まで駅から歩くと片道約2時間ぐらいかなと思います。私たちは、とにかくゆっくりと絶景に足を止めまくり写真撮りまくって、駅⇔渓谷往復4時間強を費やしました。

養老渓谷駅スタート

小湊鉄道「養老渓谷」駅までは、五井から約1時間です。のどかな里山景色の中をごとんごとんと進み、小さな駅に小刻みに停車しながら、午前10時半頃のんびり到着。

栗又の滝へはここからバスが出ているようで、大勢の方がバスへと向かわれました。が、私たちはここから歩きます。駅前のモミジは真っ赤っか!

まだ一歩も歩いていませんが、すでに紅葉満喫気分。

駅舎を出て、線路を渡ります。なるほど、単線。

色づく道中のんびり渓谷へ

今年最後の紅葉山歩。まずは里山の舗装路をサクサク歩けると思いきや、それがもう、道中の紅葉が素晴らしいのです。秋はここを中心に降りてきていたのではないかと思うほど、都心の紅葉とは一味違う。

ほどなく橋を渡ります。私たちが通ったのは宝衛橋、向こうに見えるのは渓谷橋。

橋を過ぎても、この景観。駅は観光客で大賑わいでありましたが、こちらに進む人は少なくて、ヘッポコは快調に前をゆく。

黒川沼という沼の脇を通ります。

そして、朝生原トンネル。ここを抜けると、一気に山感が高まります。

女ヶ倉(めがくら)分岐です。右へ行くと大福山を回って渓谷最深部へと下りる尾根ルート。左は梅ヶ瀬渓谷満喫の川沿い(というか川の中)を歩く、沢ルート。前のグループも沢ルートへ行かれるみたい。私たちも左を進みます。

紅葉のトンネルを抜けて渓谷へ

ぎゃっ!まだ渓谷の入口にも到達していませんが、もうホント、どうしよ~というほどの紅葉のアーチの中を歩くことに。

こんなんなんです。午前11時半ごろ。しかも人が少なくて、木々も葉っぱも、私たちを迎えるために色づいてくれたのかと勘違いしてしまう~💦

そしてやっと、渓谷の入口到着。ここには駐車場がありました。駐車スペース余裕あり。

梅ヶ瀬渓谷ウォーキング

さてここから、川沿いの沢に降りて往復たぶん約5キロの渓谷歩き。両側を高さ30〜50mの地層むき出しの浸食崖に囲まれて、しんとした静寂の世界が始まります。

崖の間の木々は黄色や赤に色づいて、その色が川面に映り、光り輝いて見えました。

そうそう、この川を何度も何度も飛び石を渡って横切ります。渡渉箇所が多いと聞いて、トレッキングシューズに防水スプレーをしっかり吹き付けてきました。時々深みもあるのでチャポンと落ちないようトレッキングポールを杖代わりに💦

川沿いの地面は色づいた葉っぱたちがたっぷりと埋め尽くしていました。

川の水はちょろちょろと静かに流れていて、奥多摩でお馴染みの渓谷「御岳渓谷」での勢いのある水流とは違う、穏やかな川音が心に沁みました。

左側の壁面は水がしたたり落ちて日差しを浴びた苔が美しく、渓谷内の紅葉は今がピーク。不思議の森の中に迷い込んだみたいな神秘の世界であります。

時々ちょこっと川沿いを離れて、林の中へと入ったりしつつ

と思えば、またしても、背の高い崖の下に私たちはいるのだ。

崖の隙間から青空と木々の彩り。

もうどうよ!

ここは別世界であるのだと、何度もつぶやいてしまいます。

せせらぎの階段

ここも渡ります。

崖の間から湧き水が流れ落ちる濡れ壁は、冬になると水が「つらら」になるのだそうです。そんな「つらら」スポットが何か所も。

むむむ?中を通ることはできないけれど、不思議な穴があって、もしかして森の妖精の通り道。あっ、いた?!

高い壁に囲まれた渓谷でありますが、時々太陽の日差しが差し込むと、それはもうとても幻想的で息をのむ。

浸食壁の上の木々は真っ赤に色づいて、他では見られないダイナミックな景観に感動です。

ヘッポコ相棒は水辺が特に好きなので、この場所はお気に入りになったみたい。

沢ルートにはアップダウンがほとんどなくて、息がきれることも、膝が痛くなることもありません。安心して景色に浸ることができる。

輝いてる✨

道中で足を止め過ぎたせいもあり、結構長い道のりでしたが、ようやく大福山尾根ルートとの分岐に差し掛かりました。右に上がると大福山コース。

渓谷内は、こんな倒木もあり、それも自然の営みの一部。

渓谷最深部「日高邸宅跡」

渓谷の最深部「日高邸宅跡地」に到着しました。ここより先は行き止まり。

ちょっと待って。ここに邸宅があったとな?

そうなのです。日高誠實(のぶざね)という人は幕末~明治の漢学者で、この梅ヶ瀬渓谷の命名者でもあるようです。この場所をまさに「理想郷」にしようと30年近くをここで過ごしたのだとか。邸宅の横に書堂を作り貧富の別なく住民たちを集めて様々な教育を施してもいたようです。今では静寂を保つこの場所に、100年以上も前、未来を夢見た若者たちが何度も歩いたのかと思うと感慨深いです。

ベンチがあります。ここでランチタイム。(渓谷内でベンチがあるのはここだけ)

こんなに素晴らしい秘境でありますが、紅葉ピークの日曜日でも、歩く人は多くはありません。しっとりとした静寂と世にも美しい景観は、日高さんではないけれど、理想郷にふさわしい場所でありました。

もしここに家があったら…どんな風に過ごす?ちょっと怖くない?でも人生観は全く違うものになりそうだよな~。えっ?例えばどんな?

う~ん、理想郷というより、ここは‘桃源郷’の境地だよな。頑張らない、求めない、だけど心の中は穏やかに満たされて、見るもの全てが美しい、とかさ。そうだね、かもね。なんてね。

帰り道も絶景堪能ウォーキング

日高邸跡でラーメンを作り、とにかく秘密の場所を見つけた喜びにたっぷりと浸った後は、来た道を戻ります。

この倒木は何年前から倒れているのだろう。見ると根っこは地面にちゃんとあり、枯れているわけではなく葉っぱは色づいていて、もうこの姿が正しい形なのかもしれないなと思います。

道中を一度経験した後は、行きよりもゆっくりと崖を見上げることができます。

一体何年をついやしてこの浸食崖はこの姿になったのだろう。いつも感じることですが、悠久の時を思うにつけ、私たちはその中の小さな点、ゆったりと大自然に身をゆだねていれば良いのだと、ふ~っと癒されるのです。

つららスポット。冬になると、壁面一体に水が凍り、地層の段々に沿って幾重にも圧巻のつららが見られるようです。

木々が太陽の光を送り込んでくれているみたい。

森の精がいるのならこの辺りかな。

行も帰りも、止まることのないせせらぎの大合唱が渓谷の中に響き渡っています。

水辺に映る今年最後の紅葉。鏡の池のよう。

渓谷を抜けて、午後の黒川池。

駅までの道中は、ますます燃えるような紅葉ロードでありました。

駅に到着すると、すごい人!一時間に一本の列車には改札前から大行列でした。

が、この時期の小湊鉄道は三両編成になっていて、小さな駅にあふれるほどの人が乗車待ちをしていましたが、全員座れました。

秋の終わり、ちょこっと遠出の旅でありましたが、今年最後の紅葉に、思いがけず素晴らしい場所で出会うことができました。

何度でも行きたい場所「晩秋の梅ヶ瀬渓谷」

静寂に包まれた秘境

私たちの“桃源郷”

見つけました!

💖☺☺💖