真っ赤な秋を追いかけて(安達太良山)

紅葉の山

 智恵子は東京に空が無いといふ。
 ほんとの空が見たいといふ。
 私は驚いて空を見る。
 桜若葉の間(あいだ)に在るのは、
 切っても切れない
 むかしなじみのきれいな空だ。
 どんよりけむる地平のぼかしは
 うすもも色の朝のしめりだ。
 智恵子は遠くを見ながら言ふ。
 阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に
 毎日出ている青い空が
 智恵子のほんとうの空だといふ。
 あどけない空の話である。
 (高村光太郎「智恵子抄」~あどけない空の話~より)

 この東京で薄灰色の空のかけらを見上げる日々を送る私は、その「ほんとの空」がどうしても見たくなり、行ってしまいました!
 今回は「ほんとの空」と「真っ赤な秋」を探す旅路でございます。

 ただ、そこはちょっと遠い・・・なので、先日の土曜日、仕事を終えて急いで着替えて、翌朝の山行のために新幹線に乗って郡山着は夜中11時過ぎ。郡山のビジネスホテルに前泊して・・そこまでして行くか!?ですが・・・行っちゃいました!

 奥岳登山口からはゴンドラが出ています。寝不足も激しく、もちろんちゃっかりゴンドラの始発に乗車しました。
 そして、ゴンドラを降りるといきなり「ほんとの空」が出迎えてくれます。 
 スゴイ!こんな青い空を見上げることなんて・・・さすがに東京では滅多に体験できません。

 今回目指すのは、福島県二本松市にある「安達太良山」。
 山頂は、なだらかな山の上にあのポツンと飛び出た場所。「乳首」と呼ばれています。

 日本百名山の一つですが標高1700mで急な上り坂も少なくて美しい山です。
 小一時間も登ると、あっという間にもうすぐ山頂です。

 山頂の乳首は岩場で鎖やロープで登るのでやや危険あり!ですが、寝不足じゃなければ大したことありません(笑 とにかく、空が青い、青すぎて眩しすぎて目にしみます。

 後ろのがけの上が山頂。よじ登りました。山頂はとても狭い岩場で、下を覗くと足がガクガク・・・あっ実は私は高所恐怖症気味な女なのでした(^^;そんな人が山へ行くのもどうか?と思うのですが・・・この岩場にこうして座るのはとっても怖い(ーー;)でも、気持ちがイイ、でも怖い・・・どっちなんだ!と言いながらここで遅めの朝ごはん。

 向こうに見えるのは、「磐梯山」です。なんと美しい、会津磐梯山は「宝のぉ~山~よ♪」をズーム!

 実は安達太良山は活火山です。この先の稜線を歩くと火口なのです。

 沼ノ平火口です。あまりの荒々しさに息を飲むほどでした。

 1900年には大きな噴火があったため、ここ沼ノ平火口の周辺には植物も殆ど生えない荒涼とした風景です。火山噴火のすさまじさを実感して胸が痛くなります。

 安達太良山山頂からは鉄山などの尾根歩きが楽しいところですが、ひとしきり遊んだら来た道を戻らずに周回コースでゆるゆると時間をかけて紅葉を楽しみながら下山することにしました。

 なかなか来られなくて、山頂付近の紅葉のピーク時期は過ぎてしまいましたが、それでも降りるに連れて晩秋の錦絵が美しく広がっていました。素晴らしい!!

 青い青い抜けるような秋の空と、穏やかに色づく草木の間を歩くのは何とも・・・言葉が思いつきません。
 とにかく・・・最高です。
 (画像はどれもクリックで大きくなります)思えば秋にはこんな錦絵のような染め帯ってどうかな、今度染め屋さんに相談せねバ!なんて思いつつ・・(^^;

 途中の山小屋でお昼ご飯にしました。お湯を沸かしてカップ麺!山で食べると不思議に美味しい。安達太良山で有名な温泉に入れる山小屋「くろがね小屋」には黒い鐘があって、黒い鐘と紅葉のなんとも言えぬ美しいコントラストも素敵でした。

 そして下りは長くて平坦なハイキングコース。なんとも言えぬ気持ち良い山道が延々と続きます。

 下山間際に「あだたら渓谷自然遊歩道」という川沿いの滝のある径がありましたので歩いてみました。
 滝の水でコーヒーを入れて、本日の山行の終了!なんと、ほぼ7時間も歩いてしまいました(^^;

 登山口に到着してレストハウスでビールを飲んだら・・・寝不足の体に強烈にしみわたって・・・眠いzzz… 

(おまけ)カメラマン兼、近ごろ山岳ガイド気取りの夫です。相変わらず山頂で大はしゃぎ(ーー;)
 おっとっと、俺の空だ!!  

だから…そうじやなくて「ほんと~の空」です!

 なんとなく冬の匂いのする晩秋の山で、自然の荒々しい厳しさと、穏やかなやさしさと、そして、めぐる季節の愛おしさをたっぷりと感じてまいりました!こういう体験をすると、またすぐ行きたくなってしまうわけなのです・・・・
 

 そろそろ東京でも草木が彩りを増し、風が沁みる頃が近づいてまいります。
 ゆっくりと寒さを味わいながら、季節を愛でて過ごしてまいりたいと思います。