乗鞍岳!畳平散策~剣ヶ峰登頂

あの頂きへ

9月の20日過ぎ、1泊2日で旅した乗鞍岳の記録です。

酷暑が弱まり、ようやく涼しくなってホッとすると、また山へ行きたくなりました。でも、どこに行こう?あれこれ思案していたところ、あっ、そういえば!

あの「乗鞍岳」、過去2度も訪ねたのに、毎回大雨だったな。思い起こせば、11年前の夏は豪雨でバスが途中でUターンする始末、3年前の夏はなんとか登山口のある畳平バス停までは行けたのですが、目の前は真っ白で激しい風雨に打たれて登頂を断念しました。

乗鞍岳は北アルプスの南端に位置し、最高峰「剣ヶ峰」は標高3026m。だけど、乗鞍スカイラインが通っているので(マイカー規制のためシャトルバス利用)標高2700mの畳平までは、観光気分で行けます。そこから剣ヶ峰への登頂コースも割と易しくて、最も登りやすい3000mの山と言われています。

過去2回は乗鞍高原の滝めぐりやハイキングもしたかったので「白骨温泉」に宿泊しました。しかし今回は、畳平に泊まることにしました!だって、とにかく、何としても登頂を果たすのだ!

おかげで、3度目の正直!晴天の青空とはまいりませんでしたが、なんとか雨も降らず、天空の宿で星降る夜を過ごし、翌朝には霧と雲の間に間を赤く燃やす朝日を鑑賞した後に、10年越しの願い叶って3026mに到達することができました。

アクセスと宿泊場所

◆アクセス:東京からマイカーにて(これまでも何度か駐車した)「乗鞍高原観光センター」駐車場へ。無料の大きな駐車場ですが、9月20日過ぎの休日、到着した11時半頃はほぼ満車。1台だけ空いていたスペースに滑り込みました。ここからシャトルバス(要予約)が小一時間で標高2700m畳平へ連れて行ってくれます。

標高が上がるにつれて、車窓からは雄大な景色が広がりました。過去2回、窓の外は真っ白でバスの窓ガラスに雨が打ち付けていましたなぁ~💧。2025年9月22日、そろそろ秋の色づきが始まって、お天気は曇りでありますが、まあまあ、まずまず。

◆宿泊:畳平「銀嶺荘(ぎんれいそう)」今回は乗鞍高原の散策はせずに、とにかく(お天気を見計らって)登頂したい!というわけで2日間をここ畳平で過ごすことにしました。畳平には「白雲荘」と「銀嶺荘」の二つの宿(ほぼ山小屋)があります。白雲荘は相部屋しか空きがなかったのですが、銀嶺荘では一つだけ個室が空いていました。お風呂あり。ただ、夕方に白雲荘のレストランを外から覗いてみたら、随分とご飯が美味しそうでありましたが💦

畳平(標高2700m)2日間の行程

バスを降りると標高2700m「畳平」

3年前は、ここからの景色はホントに真っ白でした。池があるはずなのに、全然わらかない~!風雨が厳しくて立っているのもやっとでした。(2022年夏の記録→雨の乗鞍岳!高山植物と滝めぐり – ほわもわ

しかし、この度、ようやく念願叶い、景色が見えた!それだけで、ちょっと感激してしまいます。写真では何度も見てきましたが、ようやくこの目に直に映った!こんな景色だったのですね💗

乗鞍岳は(有史以降の噴火は記録がないようですが)活火山です。標高3026mの主峰剣ケ峰を中心に、いくつもの峰々と火口湖や火山丘を有し、それら含む大きな山容の山岳を総称して乗鞍岳と呼びます。

畳平を降りると目の前に飛び込んでくる「鶴ヶ池」。S字型の湖面が鶴に似ているからとか。ふむ。

う~ん、ちょっとガスが…。それでも鶴ヶ池がちゃんと目の前にあり、湖面に空と山を映していることが嬉しいのです。

◆行程:初日は雲が多いため、山頂からの眺望を鑑みて、登頂は2日目にすることにしました。

(1日目)(マイカーにて東京→乗鞍観光センター駐車場へ)バスで畳平。荷物を預けてから散策。「大黒岳」「富士見岳」「魔王岳」を歩き、広い広い畳平を堪能しました。ただお花畑は雨の中でありましたが前回も歩いたし、今回は夏の花も終わり草紅葉の時期だから、周辺の山めぐり中心で。

(2日目)大黒岳で日の出鑑賞の後、剣ヶ峰を登頂し、肩の小屋で休憩しつつ、のんびりと畳平に戻りました。(畳平からバスで乗鞍観光センター駐車場へ。東京まで渋滞の中のろのろ帰宅)

*歩いたところは赤線

朝日鑑賞ポイント大黒岳(2772m)を下見

初日はまず、翌朝の日の出ポイントである「大黒岳」を下見することに。なんたって、鶴ヶ池を回り込めば登ること約20分で山頂に到着できるというお気軽ポイントです。

火山と聞くと納得できるのですが、広陵としたザレ場の石段を上がり、ほぼハイマツに覆われた山肌。もう少し前ならばコマクサのピンク色が癒してくれただろうけど、今回は草紅葉が始まっていました。

サクっと頂上!2772m。ただ残念ながら、明朝に朝日が望めるはずの東斜面はガスと雲に覆われていましたが、ハイマツの緑が映える。翌朝はぜひここから、美しい日の出に会えますように。

振り返ると、畳平が見えました。ちょこっと上っただけでありますが、鶴ヶ池は鏡のようで、バスターミナルと二つのお宿は模型みたい。

頂上の稜線は、ゴロゴロ石ころとハイマツ。前方には、明日行く予定の「剣が峰」が見えますが、あれよあれよと雲の中。明日はぜひ、雲が静まりますように。

大黒岳は雷鳥に出会える山でもあり、大きなカメラを抱えた人もありました。カメラマンさんが構えていたので雷鳥!!?と思いきや、この子はたぶん「イワヒバリ」でした。

ハイマツの中を出たり入ったり、登山道からカメラを向けるハイカーさんたちをギャラリーとでも思っているのか、いい気分で2羽3羽がちょこちょこピョンピョンと駆け回ってくれました💦

大黒岳の登り口には、畳平の一つ手前のバス停、日本で最も高い場所2716mにあるバス停があって、乗鞍畳平の名所となっています。ここはまた、長野県松本市と岐阜県高山市の境界線の場所でもあります。

富士見岳(2817m)にも行っとこ

大黒岳を降りてくると正面には富士見岳登山口があり、ふむふむ、ちょっとそこにも登っておこう。

気楽に上り始めたのでありますが、むむむっ?いやいや本格的な登山道ではないか!しかもガレ場。まあ、明日の練習と思えば気が引き締まって良いのかも。

少し登って振り返ると、畳平。あの雲が晴れてくれたなら、きっとパンフレットのような美しい景色を収めることができたのになぁ。でも欲張ってはならぬ!何しろ前回も前々回も‘真っ白’だったのですから!

赤い屋根のバスセンターから始まる白い道は木道で、ここがお花畑ゾーンです。登山をしなくても、ここを一周(3-40分)散歩するだけでも別世界の非日常性を満喫できます。

とは思いますが、私たちは登る💦。で、2-30分ほどで、富士見岳山頂(2817m)到着です。狭い山頂ですが、眺めは抜群。たぶん晴れた日なら360度ビューなのだ。(思えば2800超の山頂にサクっとタッチできるなんて、すみません、というか、ありがとうございます!)

あの池は「不消ヶ池(きえずがいけ)」。ここは乗鞍で唯一の「氷河湖(氷河の浸食作用で凹んだところに雪がたまってできた湖)」年中その雪が消えないことから名づけられたそうです。スイスをハイキングした時にもあちこちにあった氷河湖。この神秘的な色は氷河が削った砂や石が混じっているから。

あっ、明日登る「剣ヶ峰」が姿を現しました。

あのツンととがったところまで行くのです💚あっ、ツン♪の上にお社が見える。あそこは乗鞍本宮。待ってて下さいね。明日必ずお参りいたしますので!

富士見岳から降りて「不消ヶ池」をよぉく見てみました。

うん。この水は氷河が解けた水。氷河が雪になり水になり、一体何年かかったのだろうね。。

宿への帰り道は、不消ヶ池の脇をかすめて、お花畑へと降りる道を歩きました。この時点で夕方の4時を過ぎておりまして、最終バスが出た後。この日、畳平に宿泊する人以外は誰もいない、静かな時間が始まります。

魔王岳からの夕日&畳平での星降る夜

人もバスもいなくなった畳平バスターミナル。レストランもお土産屋さんも早々に店じまいです。これから、夕食前に「魔王岳」へ登ってみようと思います。

あっ、ちなみに、ここが今夜の宿「銀嶺荘(ぎんれいそう)」です。1階のおみやげ物屋さんは閉店。隣のお社は「乗鞍本宮(中之社)」です。翌日登頂予定の剣ヶ峰にあるのが「乗鞍本宮奥宮」。何しろ、あらゆる願いを叶えてくれる太っ腹な神様だそうなので、明日にはぜひ、何かしらお守りをゲットしなくては!

さて、だんだんと空が薄墨色になってきました。太陽が沈み始めたのですね。ここ畳平は山の峰々に囲まれて夕日の鑑賞ポイントはなさそうなのですが、とりあえず「魔王岳」まで行ってみます。

2763mの頂上までは、ものの10分ほど。眼下の建物は今夜の宿「銀嶺荘」です。あっ、恵比寿岳の稜線に夕日が沈む。

誰もいない山頂で、雲を燃やして暮れていく今日を見送りました。

そして、銀嶺荘の夕食は、ポークカレーと豚汁。さっき白雲荘の前を通った時に見た夕食が忘れられずにおりましたが💦いやいや、山小屋でカレーはテッパンなのだから、これで十分満足ですvv。

その後お風呂にチャポンと浸かって温まった後は、ヘッドライトを頼りに、暗闇の畳平を歩いて星空観賞へ!雲に覆われた一日でしたから少し心配。見えるかな~✨目が暗さに慣れてくると、おっ、おおお、なんと、満点の星空でありました✨✨スマホカメラでは大きな星しか拾えませんが、この何倍もの星が降り注ぐ夜でありました。

大黒岳(2722m)からの朝日

2日目❣はじまり。

日の出時刻は午前5時28分。大黒岳の山頂まで行くためには、5時前には出発しなくてはなりません。よって4時半起床!あれこれととにかく身に着けてダウンを羽織って、ヘッドライトをつけて、レッツゴー!むむむの曇り空でありますが、希望を捨てずにワッセと登りスタンバイ。

しばらく雲が覆っていた空がじんわりと明るくなり始めた時、おっ、おおお~空が燃え始めた。

雲海のかなたに、雲の間に間を燃やす今日の太陽!おはようございます。

しかし、その丸い姿をとらえることはできず、あっという間に雲に覆われて、居合わせた数人の皆さんとため息をついていると、今度は下から赤い雲がわき上がってきて・・・なんだなんだと皆の気持ちが騒ぐ。

すると、なんと、雲海が消えて、遠くに連なる峰のシルエットが浮かび上がり、赤とグレーのグラデーション。色んな山で日の出を見てきましたが、こんな幻想的な景色は初めてです。

いよいよ空が青さを取り戻し始めるころ、光のシャワーが今日という日の隅々までを照らし始めてくれました。ハイマツの下に眠るであろう雷鳥もイワヒバリも、みなさん、夜が明けましたよ!

そんなこんなで、珍しくファンタジックな日の出ショーを堪能し、ゆっくり宿に戻って朝食を頂いて、いよいよ登頂を目指します。

イザ!剣ヶ峰(3026m)の頂へ

うっ、今日も空は白いのですが、それでも雨も降らず、日差しも降らずではありますが、登山日和でもあります。サクサクとなだらかな道を進むと、ものの40分ほどで、肩の小屋が見えてきました。実際の登りは肩の小屋からなのです。

凸部の一番奥が剣ヶ峰頂上、乗鞍本宮が鎮座するピークです。よしよし、青空は見えませんが、山頂部分にはガスも雲もかかっていません。

そして、肩の小屋。ここから山頂まで小一時間の予定です。3000メートル峰が小一時間で制覇できるということに驚きであります。だから大人気の乗鞍岳は、この日も大勢の登山者さんたちと一緒です。

肩の小屋の裏にある「剣ヶ峰口」。ここからです。

最初はなだらかなザレ場をゆっくり標高を上げていきます。

しばらく登ると、おっ、あれは北アルプスの山々です。もいます。あっあれ奥穂高だよね!あそこにも登ったのだよね~。今日はあっちも大勢の人が登っているに違いないけれど、考えてみれば、ヘルメットを被って気を引き締めまくって梯子を上ったことからすると、乗鞍岳はなんて優しくおおらかなのだろうと、しみじみしてしまいました。

なんて言っていると、岩ゴロゴロの難所がやってきました。でも大丈夫。ちゃんと一歩ずつ進めば問題ありません。

ほどなくして、ちょっとしたピークの「蚕玉岳(こだまだけ)」を過ぎると一瞬なだらかな道になります。ここからはもうすぐそこ、お社がはっきりと確認できます。

ただ道はこんななので、浮石に乗らないように気を付けて、一歩ずつ慎重に進みます。

こんな険しいところに頂上小屋があり、宿泊小屋ではないけれど、オリジナルのTシャツなどを販売していました。

頂上小屋を過ぎて、このガレ場を登りきると、剣ヶ峰頂上はもうすぐそこ!

そして、到着!標高3026m、乗鞍岳剣ヶ峰頂上です🤩

そして、ここが乗鞍岳頂上の乗鞍本宮奥宮です。なんと宮司さんがいる。

お参りを済ませて、頂上で記念撮影🌟とっても大勢の方が登頂されていましたので、順番に、ハイ!チーズ☺v

見渡すと、あれは「権現池(ごんげんいけ)」です。乗鞍で最も高い場所にある火口湖。ここがかつて噴火口だったのだ!

せっかくだから、動画も撮ってみました(↓)。

そして、山頂神社で大人買いしてしまったお守り一覧はこちら💦頂上記念の雷鳥守り、身体安全、災い除け、なんでも願いが叶う頂守!むふふ。とりあえず心の平穏を保つことはできそうです(^▽^;)

さて、山頂を満喫したら、鳥居をくぐって、稜線へと降りていきます。足元はくれぐれも気を付けて。

蚕玉岳まで降りてきましたので、頂上でお昼ご飯。宿でおにぎり弁当を作ってもらいました!

畳平へのんびり下山

というわけで、あれよあれよという間に頂上に到着し、そしてまた、するすると下山したのでありますが、この日は祝日で、私たちが下山する時刻には大勢の人が登ってこられました。大賑わいの登山道を肩の小屋に向かって降りて行きます。

肩の小屋でコーヒーを入れて一服!さっきまでいた頂上はあそこ。肩の小屋周辺は草紅葉。

朝9時頃に畳平を出発して、肩の小屋には12時前に下山してきました。この日は東京まで渋滞の高速を走っていかねばなりませんので、早めにバスターミナルへと戻ることにしましょう。

あっ、富士見岳と不消池

今日も「不消池(きえずがいけ)」は、静寂の湖面に山肌を映しています。

2日間、空を、山を、眺めて暮らした畳平

畳平と鶴ヶ池

朝日を見つめた大黒岳が鶴ヶ池に映り込んでいました。

大きくておおらかな乗鞍岳は、そこここに火山であることを忍ばせる厳しい表情が垣間見える山でありました。10年越しに、やっとその山容の大きさと美しさを知ることができ、そしてピークの剣ヶ峰への登頂を果たすことができて、積年の宿題をやりとげることができたという、ホッとした気持ちでいっぱいです。

深田久弥は「日本百名山」の59番目に乗鞍岳を上げています。そこでは、なんとも興味深い記述が…

「穂高信者は闘争的で、現実的で、ドライなのに引き換え、乗鞍信者は平和的で、浪漫的で、ウェットである」(*ここでいう信者とは信仰登山のそれではなく、観光目的の人々でもなく、黙々と住むかのように山へ入り登る人々を指すらしい)

なるほど。そうかもしれない。どちらも経験した身としては、奥穂高登頂を目指し頂上小屋に身を置いた時のあの気分と、乗鞍で夜を過ごし登頂した今回の気分とはまるでちがう。それは険しさだけではない。深田久弥の言う乗鞍岳の豊かさと厚みは、古の噴火により生み出された、乗鞍高原の広大な自然をも含むものであり、(バスを利用してしまっているという恥ずかしさを置いても)何度も足を運んだ経験からは、麓の森林や高原の奥深さを思い出さずにはいられないし、そして未だ訪ねることのできていない「位ヶ原(くらいがはら)」の周辺など、これからの紅葉の山はどんなだろうと、思い浮かべてドキドキしたりします。

そして何しろ、その乗鞍岳が、ようやく私たちを受け入れてくれたことに、何かしら、無言の示唆を授けてくれているのかもしれない、なんて思ったりして(都合よすぎるけど💦)。

ともかく、それにしても、この度も、山は、歩けど歩けども、全てにおいて、無尽なのだと思い知るわけでありました。

ようやく、秋が始まりました。山は草木を燃やし、やがて雪化粧をするのでしょうか。その静かな営みに心惹かれつつも、騒がしい下界での巡る季節を味わいながら、穏やかに過ごしていかれればな、と思います。