だぁれもいない風雪の山に(白銀の美ヶ原)

白銀の山

 今年はやっぱり暖冬なのだと思います・・・。
 標高2000mの雪山でも、雪の量は例年の1/3、雪でなくて雨が降るんですよ、と山小屋のご主人がおっしゃっていました。
 
 この度は、春の嵐の中での山業、「八ヶ岳中信高原国定公園美ヶ原」風雪のトレッキングでございます。

 山登りの醍醐味といえば色々あるのですが、一番の楽しみは、圧倒的なスケールの自然の中にこの身を預けることができることです。とりわけ、夕陽の暮れる空と山の色、満点の星が輝く漆黒の夜、幻想的な朝陽に照らされる夜明け・・・。
 でも、私の山登りの相棒は夫、実は私たち共通の休日は週一日しかありませんので、その景色を体験するには、あらかじめ画策して時間を作らなければなりません。で今回は、満を持して休みをつくり、標高2000mにある「山本小屋」さんに陣取ることに決め、期待に胸をふくらませて参りました。

 がしかし・・・期待はあえなく裏切られ、これまた偉大な自然から与えられた過酷な試練に耐える山業となってしまいました(;_;)

 美ヶ原は日本百名山のひとつ、標高2000mの広い広い高原の山です。今回の目的は登山というよりも、雄大な自然を体感すること!なので、いつもよりもうんと楽チンなトレッキングと侮りやってまいりました!

 到着直後は、こんな青空も見えていました。
 それにしても・・・雪が少ない。例年ならば高原は一面真っ白になるはずなのですが・・・。

 本番は翌日だけど、翌日もお天気が心配だから先にちょこっと歩きましょう~!それにしても広い、すごく広い、あの地平線の向こうへ、どこまでも駆けて行きたい気分が盛り上がります。お気に入りのスノーシユー(現代版かんじき)を履いてレッツゴー♪するとすぐに・・・大きな空はグレーのグラデーションに包まれはじめてしまいました。。。

 「美しの塔」という美ヶ原のシンボルです。美しの塔は、そもそもは濃霧になることの多い高原での遭難防止のための濃鐘。この怪しげなお天気の日はいよいよ鳴らすのか?と思いきや、実は人影なし(>_<)

 お天気がよければ、猛烈な絶景に出会えるはず、アルプスの山々が夕日に照らされるはずでした!かろうじて見えたのはこんな感じ。。。

 遮るものの何もない、大きな空と広い高原は猛烈なスピードで雪雲に包まれて、あっという間にモノトーンの世界となってしまいました。

 相棒は・・どこ??ちょっと待って・・・。

 仕方ない、今日は諦めて、明日に期待を託そう!何しろ明日は晴れマーク・・・のはず、でした。。
 そして小屋で美味しい「キジ鍋」に地酒、お風呂を堪能して早々に就寝、翌朝起床は5時~!!むふふっあれ?私の朝日はどこどこ?急いで着替えて外へ。。。で、あれ?なんで??ヤダ!やだやだ!朝日~どこ?それがどうやら昨日にも増しての荒天となり、違う意味で幻想的な白い一日の始まりとなってしまいました。。
 ちぇッ(´ω`)

 みるみるうちに吹雪が容赦なく打ち付けてきて・・・ヤバイ、まつげが凍る・・・。

 一旦小屋に戻って朝食を食べて態勢を立て直すことに!地図を広げて予定コースの見直し、議論の末にコースを短縮し、イザ出陣!
 今回の雪中トレッキングは、(ホントは茶臼山にも登頂予定でしたが諦めざるを得ず)、山本小屋~美しの塔~塩くれ場~王が頭~王が鼻~アルプス展望コースを経て~鳥帽子岩~百曲り園地~美しの塔~山本小屋の周回コース、通常の無雪期タイム約3時間半。これ、歩きます。

 早速、美しの塔・・・まっ、これはこれで、なかなか見ることのできない幻想的な景色ではありますな!

 誰も歩いていない高原、貸切状態です!

 こんな日は、ウェアの上にゴアテックスというレインウェアを上下着込んで、まつげ予防(笑)にサングラスも着用し、雪の彷徨に備えてライトやコンパスもポケットに詰め込み、非常食にドリンクも持って、こんな重装備!ただ一点、後に大きな後悔をすることになるのは・・・長い髪の毛を帽子の中に入れておくべきだった(ーー;)すでに凍りはじめて・・・でも今更仕方ないので、前へススメ!!

 途中、雪上車とすれ違いました。王が頭(美ヶ原山頂)には予約の取れないプチ贅沢なリゾートホテルがあるのですが、そのホテルのお客様送迎用の雪上車みたいです。へぇ~いつか泊まってみたいものですが、ご縁あるかな・・・?

 そして、ここがその「王が頭」。すぐ先にそのホテルの建物があるのですが・・・吹雪で見えません。

 ここまで風雪の中を小一時間歩いたところで、な、なんとすっかり浦島太郎状態!髪が凍りつき・・・真っ白になってしまいました(°ω° )うそでしょ!?竜宮城にも行けてないのに・・・(;_;)

 ここから「王が鼻」へむかう道は樹氷の中のハイキングコースです。晴れていればどんなにか美しい樹氷ですが、もう良いんです(^^;水墨画のような樹林帯。

 こんな日のトレッキングでも、それはそれで意外に楽しい~だって、美ヶ原、マジで貸切り♪

 激しい風雪の中ではありますが、相棒のつけたトレースを進みます!雪山パトロール隊さながらの夫です。

 そして「王が鼻」を折り返して「アルプス展望コース」を進むのですが、展望???なしです(;_;)仕方がないですが、それでも歩きやすい雪道なのは、さすが高原「美ヶ原」です。

 歩いている間じゅう、実は何も考えておりません!この何も考えずに、ただただ雪の中にいるって感じがたまらなく好きです。。。

 あっという間にアルプスコースを過ぎて「塩くれ場」に向かいます。このあたりになると、朝から降り積もった新しい雪が凍った地面を覆って、もふもふで気持ちの良い雪道になりました。

 わーいヾ(@⌒ー⌒@)ノ

 大はしゃぎで美しの塔に戻ると中に温度計が・・・見てびっくり(゚o゚;;ゲゲゲッ、な、なんと、この日の気温はお昼時というのにマイナス17度でした!そりゃ~ポカリスエットも凍るはずです(^^;

 そして、雪中トレッキング4時間も経つと、こんなことに。。。もしかすると正体は雪女!?しかもかなり頼りない雪女(^^;とりあえず濃鐘を鳴らしてみたりして、遭難する人がありませんように!最後に大事なお仕事も終えて、美ヶ原、雪の彷徨、終了でございます(^^;

 期待していた夕焼けも、満点の星空も、輝く朝日にも会うことは叶いませんでしたが、かわりに大いなる自然に厳しい試練を与えて頂き、頑張った甲斐あって、美しいスモーキーホワイトの世界をたっぷりと堪能いたしました。

 晴れた日にはどんなにか美しい展望を味わえたかと思うとちょっぴり悔しい気持ちではありますが、山ではもしかすると、晴天に恵まれる日よりも荒天に泣く日の方が多いのではないかと思います。ひょっとして人生も同じかもしれませんが・・荒れるお天気の日に耐えるからこそ晴れわたる日が心の底から嬉しいわけで・・・、きっといつかもう一度、「美ヶ原」、リベンジしたいと固く誓った山業でございました(^-^)

 今回はスモーキーなモノトーンの世界を長々と繰り広げて、お付き合い下さり誠にありがとうございます

 明日の土曜日も元気にお店番をしております。そろそろホントに春準備!ぜひお出かけ下さいませ。

(おまけ)
 凍りついた体を解凍するために、帰り道の立ち寄り湯は、上諏訪駅から徒歩5分諏訪湖畔の「片倉館 千人風呂」で温まりました。大浴場は1.1mという深さで底には玉砂利が敷き詰められていて浴槽を歩くと足つぼマッサージできます。昭和3年の建物だそうです。解凍完了後、特急あずさで一路東京へ!! それにしても、山を下りたら青空って・・・